アベミハ大学生シリーズ 7) 何が「取って喰わない」だ。 木田とは本当に合わないと再認識した。 今までだってできる限り避けていたのに、今日は本当についていない。 そう不服に思いながらも、仕方なく助手席側の扉を開けたのは、一刻も早く家に帰りたかったから。 アイツの為だ。 そう自分に言い聞かせて入った車内は、少しだけ煙草の匂いがした。 …この人、この車に彼氏乗せたりすんのかな。 あまり、女らしい車とは言えねぇよな。 「彼氏の車なの」 木田が急に言ったので、少し焦った。 オレ、今不審な顔したか…? 「そんな車に、他の男乗せるんスか?」 「大丈夫、君のように心狭くないから」 …コイツ、ヌケヌケと。 何か嫌味の一つでも返してやろうと思案しかけたが、シートベルト着用を急かされた上、車が急発進してそれどころではなくなる。 危うく舌を噛みかけた。 「ちょっ、危ないじゃないスか?!」 「え?だって急いでるんでしょ?」 「はああ?!」 急いでるけど…。 でもオレ、そんなこと一度も言ってねェぞ。 しかも、こんな急がれ方をして事故にでも遭ったら本末転倒だ。 「あの席で、あれだけ携帯に気を取られていたからそうだと思ったんだけど?」 意地の悪い笑みを浮かべ、彼女は答えた。 喰えない女だ。 人の行動、ずっと見ていたのか。 そして、それにも気付かずに自分の世界に浸っていた図が、どれだけ間抜けだったかと想像すると己に一番腹が立つ。 無意識に舌打ちをする。 「…それでオレを引っ張り出したんですか?」 「そうよ」 「その為に、演技までして?」 質問を重ねると、木田は吹き出した。 「ハハッ、タカ君はホント自意識過剰だね!」 オレの顔がカッと熱くなる。 このアマ〜〜…。 [*前へ][次へ#] [戻る] |