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アベミハ大学生シリーズ
6)
「大丈夫すか?」


かける言葉が他に思い付かず、在り来たりなことを口にする。
本気でなんか心配していない自分が、酷く冷たい奴に思えた。
けれど、三橋が気掛かりでどうしても他のことが考えられない。
木田は相変わらずハンカチを口に当てたままで表情が読めないし、何も言わない。

足取りも悪くなさそうだから、肩を支えることさえしなかった。
だいたい恋人でもない女だ。
この大通りで人目のある中、どこにどう触れて良いのかさえ分からない。


…駅に着いたら、もう別れて良いよな?
そしたら、とりあえず三橋に電話をしてみよう。


やはり三橋のことでいっぱいになっていたオレは、急に左腕を引っ張られて思わず躓きかけた。


「なっ、何なんスか?!」


木田がオレの腕を掴んで走り出したのだ。


「こっち!」


それだけ言って、彼女は路地裏へと走り続ける。


………おいおい、気分が優れないんじゃなかったのかよ?!!


路地裏を抜けて、細い車道を渡る。
そこは、小さなコインパーキングだった。


「私の車、ここに置いてるの」


置いてるって………。


「飲酒運転は刑罰もんですよ」


無愛想に言うと、木田は楽しそうに笑う。


「飲んでないから、捕まらないよ〜」

「だって、飲み過ぎて・・・」

「誰が悪酔いしたって言った?」


確かに。
そんなことは言ってなかった。
あの席で、全く飲まなかったのか?
しかもこの女、さっき走っていた。


「……何考えてんですか?」


嘘をつかれた上、好きに振り回されたような気がして猜疑心と共にイラつきを覚えた。
しかし木田は全く意に介さず、モスグリーンのジープに乗り込む。


「乗りなさい、送ってあげるわ」


はああ?!
何言ってんだ、この女!!


「そんな怖い顔をしなくても大丈夫よ。
取って喰ったりなんかしないから」



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あきゅろす。
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