アベミハ大学生シリーズ 5) 飲み会は異様な盛り上がりを見せた。 前キャプテンが卒業後すぐに結婚したとかで、在学生の誰にも言っていなかったものだから、後輩たちは大騒ぎだ。 オレも少なからず驚いた。 彼女がいることは知っていたが、生真面目な付き合いをしていたみたいだったから、そんなに早く身を固めるとは思いもしなかった。 ………にしても。 この雰囲気では、中座のタイミングが難しいぞ。 6時から始まった飲み会を、オレは8時には退席するつもりだった。 しかし、どうにも間が合わず、時計を見れば9時を既に過ぎている。 ヤバい。 さすがに三橋もご機嫌斜めになっていることだろう。 もしかしたら、「拗ねる」の次に「怒る」を修得するかもな…。 そういやアイツ、あの時本当に何て言ったんだろう。 またもや、電話でのやりとりを思い出す。 携帯電話を確認するが、やはりメールも電話も着信がない。 ここに来て、もう何度携帯を開いただろう。 …確か最後、微かに「る」って聞こえた気がした。 まさか、「実家に帰る」とか言ったんじゃねぇよな。 夫婦喧嘩じゃあるまいし…。 その時感じた胸の痛みと不安の意味が理解できず、ビールを流し込むことでかき消した。 「ごめんなさい。 ちょっと気分が優れないので、お先に失礼して良いですか?」 そう言って席を立とうとしたのは木田で、オレには何となく意外だった。 周囲はそうでもなく、「大丈夫?」とか「顔色あまり良くないね」なんて声をかけている。 オレはマズいと思った。 退席するのが女じゃ、同じタイミングで席を外しにくい。 今日はつくづくついてねぇ。 内心で舌打ちしていると、不意に首根っこを掴まれた。 「悪いけど…、途中まで送ってくんない?」 口元にハンカチを当てたまま、木田がオレに頼んできた。 なんでオレだよ?!と突っ込みたかったが、体調不良の女につっかかる気にはなれなくて、これで抜け出せるなら良いか、とも思い、渋々といった感じで引き受けた。 「すんません。 オレちょっと用があるんで、先輩送ったらそのまま帰ります」 皆は意外とあっさり解放してくれた。 ただ一人、「送り狼にはなんなよ〜!」とふざけたことを言ったのは今のオレの相方。 …明日シバこう。 [*前へ][次へ#] [戻る] |