アベミハ大学生シリーズ 3) 『だか、ら?』 「だから…、ちょっと遅くなるん、だけど」 今朝の気分はどこへやら。 オレは今、嫌な汗をかきながら三橋に言い訳をしている。 まるで、三橋みたいなしゃべり方で。 『何時、ですか?』 無意識かもしれないが、三橋の声は明らかに不満を含んでいる。 去年の今頃のアイツなら、こんな態度を取ることなんてなかったのに・・・。 「だから、ちょっとだけだって。 しゃーねぇだろ、急に決まったんだから」 急に決まっただなんて、本当は嘘だ。 オレはすっかり忘れていたのだ。 今日は、昨年の4回生つまりはOBが来ることになっていた。 練習を見に来るからその後は飲み会だろうな、なんて先輩達が軽く言っていたから、オレの中ではスルーされていた。 去年世話になったOBだから、無下に断る訳にもいかず、意を決して練習前に三橋に電話をかけたのだ。 『じゃ、お弁当、いらないんだ』 「明日はちゃんと一日空いてるから、さ」 我ながら歯切れが悪いし、論点をずらしているのが白々しい。 でも、自分が悪いと悟られたくないし、三橋をどうにか納得したい。 『…………る』 「あ?何だって?!」 よく聞こえなくて聞き返していたら、背後からオレを呼ぶ声が聞こえた。 「ちょっと〜、タカ君手伝ってよ〜!」 先輩マネージャーが呼びに来たのだ。 「わりぃ、呼ばれてるから行くわ。 できるだけ早く帰っから」 オレは三橋から逃げるように、早々に電話を切った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |