アベミハ大学生シリーズ
13)
「おまっ!どこ行ってたんだよ?!
あ゛〜、じゃなくて。
…顔、大丈夫か?」
三橋は顔を押さえたままだったが、オレの問いに何度も首を縦に振った。
鼻血は出てないようだから、ちょっと安心した。
とりあえず、三橋を中に入れてドアを閉める。
あまりにも間抜け過ぎた光景で、なんだか気が抜けた。
「あ…、お帰りなさい」
「…おう、ただいま」
思いがけず普通に言われて、オレは妙に照れくさい気持ちになった。
「…どこか、行くの?」
三橋はまだ額を押さえながら、オレに問う。
アルコールで顔が赤らめ、額を打ち付けた痛みで目を潤ませてはいたが、予想に反して怒っているようでも泣いていたようでもなく、一人で反省していた自分は何だったのかと急に嫌な蟠りが胸に落ちてきた。
「どっかの誰かが、瓶を転がして窓は開けっ放し、ドアも鍵かけねぇで出てくから、どうしたかと思ったんだよ」
不機嫌に応えると、三橋は、締めたと思ったんだけど、なんて言いながら首を傾げる。
「ちょっとコンビニに行ってただけ、だよ」
その態度が、オレを更に苛立たせる。
三橋はそんなオレにお構いなしで、リビングの卓袱台に買い物袋を置いて、中からお菓子やらカクテルやら取り出し始めた。
…まだ飲むのか?
「お風呂、沸いてるよ」
そう言った三橋は案の定、カクテルをグラスに注ごうとしたので、オレは瓶を取り上げた。
「…どうしたの?」
「『どうしたの?』じゃねぇ。
飲み過ぎだ、もう止めておけ」
三橋が一瞬すごく苦い顔をしたような気がして、オレは怯みかける。
しかし、三橋は諦めたようで素直に瓶から手を離し、後ろの壁に身体を預けて俯いた。
「…気分悪いのか?」
問いかけても三橋はしばらく無言で、オレは諦めて瓶を片付け始めると、微かに笑い声が聞こえた。
三橋には珍しく、くすくすと笑っている。
酔いのせいだろうか。
不思議に思っていると、急に笑い声は止まった。
「……… だ」
「は?」
何?
何て言ったんだ?
急に零れた三橋の言葉に、オレは身体を硬直させる。
「…………最低だ」
心臓が潰れる、と思った。
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