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アベミハ大学生シリーズ
1)
いつもの朝、いつもの目覚まし時計のアラームで目を覚ます。

今日は朝練もないし昼からの講義だから、8時起きだ。
少しだけ早めに行って、幾何学のレポートを片付けよう。

そんなことを思いながら目覚ましを止めて、いつものように上半身を起こして伸びをする。
そのまま下ろした左手に何かが当たった。
それは心地の良い慣れた手触りだったが、今はオレの心臓を跳ね上がらせた。



―み、三橋?!何で?!!



「おい!三橋、起きろよ!!!
お前、朝練じゃなかったのかよ?!」


思い切り肩を揺さぶってようやく目を開けさせたが、頭はまだ寝ているらしく、オレをとろんとした目で見て、「おはよう」と言ってふにゃりと笑う。
ここでいろいろやましいことをしたいのが本音だったが、今はそういう訳にはいかない。


「このバカ!
今、8時だぞ!!!」


三橋の頭を左手に、目覚まし時計を右手に掴んで、至近距離で見合いさせる。


「う…?
………う、…え?
…え〜っ?!
8時?!何で?!どうしよう?!!」


慌てて起きた三橋はシーツに躓き、見事にコケた。
このまま一人で行かせたら、車の前にでも飛び出し兼ねない。


「あ〜〜、三橋!
今からじゃ間に合わねんだから、とりあえず誰かに連絡して朝練は休むって言っとけ!
んで、講義はなんとか間に合うから、飯食ってから行け」


三橋は首を何度も縦に振り、部員に電話をする。
オレはその間にさっさと着替えて、三橋の食事の準備。
と言っても、この短時間では目玉焼きとご飯とインスタント味噌汁しか出せなかったが。

駅まで徒歩10分だがら、オレの自転車を使えば半分とかからないし、三橋の大学は電車で30分だから、ギリギリ朝一の講義には間に合う。

着替え終えた三橋は急いでテーブルにつき、朝飯にがっつく。


「っめんね、阿部君!
昨日、けーた、でセッ……たはず、なん…け、ど」

「……良いから、黙って食え」


食いながらしゃべっても意味分かんないし、余計に時間がかかる。
短時間に最大限食べる三橋の寝癖を、後ろから直してやった。


三橋が食べ終わるのを見計らって、食器をキッチンに置き、自転車の鍵を掴んで靴を履く。


「阿部君ももう出るの?」

「お前を送ってくんだよ」

「だ、大丈夫だよ!」

ナップサックを背負いながら、玄関で慌てて靴を履くからまた躓きそうになる三橋。
オレは三橋の肩を掴んで座らせる。


「バカ。
今のお前じゃ、チャリ貸してもどっかに追突し兼ねないだろ」

「う……」

「ちゃんとシューズの紐結べ。
オレはチャリを出してくるから、鍵締めてから来いよ」


そう言って、オレは駐輪場へと急いだ。





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