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幸せの素




触れ合ったところから、声を聞いた瞬間から。
貴方は僕の幸せの素。



「暑苦しい!」

後ろからぎゅっと抱き着いていたらそんな風に怒られてしまった。

一週間を勉学に勤しみ、やっと訪れた休日。
もはや毎週末の恒例となっているお泊りは健在で、土曜日の今日も彼は僕の家に足を運んでくれている。
今年になって買ったこたつに潜って、二人でうだうだと過ごすのは楽しい。
だけど、僕としてはやはり彼に触れていたい訳で。


「いいじゃないですか、ちょっとくらい」
「何がちょっとだ、前にいたらテレビが見えんだろうが!」

何度話し掛けても上の空なのが気に入らなくて彼の座っている面に回ったら、ちょうどテレビに重なってしまったらしい。
彼には悪いが、これはチャンス。
テレビという名のライバルから彼を引きはがすいい機会である。
僕だってせっかくの二人きりの休日、いちゃいちゃしたいと思うのです。

ポカポカと胸を叩かれるのを我慢して、変わらず抱きしめ続ける。
首筋に当たる息は熱くて、くらりとしてしまいそうだ。
まあ、のぼせただけだろうけど。

「はーなーせーっ」
「嫌ですー」
「もう何なんだお前! テレビくらい落ち着いて見させろよ!」
「さっきから見てるじゃないですか。そろそろ構ってくれないと拗ねちゃいますよ?」
「…………」

突然止んだ攻撃。
どうしたのかと押し付けた顔を覗き込んだら、ぽかんとこちらを見上げる彼と目が合った。
ああ、薄く開いた唇が嫌らしい……じゃなくて。

「どうかされました?」
「あ、いや……」

何とも歯切れが悪い。
普段は物事をはきはき述べる人なだけに、隠されると気になって仕方がない。
根が素直なだけに、嘘などを突き通せはしないようですが。
じっと見詰めていると、居心地悪そうにもごもごと口を動かす。
うん、可愛い。
でも逆にますます聞きたくなってきた。

「言って下さい?」
「う、ん……」
「ほら、はやく。ね?」

敬語じゃないのに弱いと気付いたのはついこの間。
急かすように耳元で囁いてやると、ふるりと肩を震わせて目を逸らされた。

「あの、な?」
「はい」
「拗ねるってことは、寂しいって思ってたってことだろ?」
「そうですね、寂しかったです」

きっぱり言うな、なんて小突かれてしまった。
それでも耳が赤いのは何なのだろう。
一体何を言ってくれるのかと少し期待しながら待っていると、体を寄せられ、


「……ちょっと可愛いと思った」


ぽかぽかに暖まった身体を羞恥から真っ赤に染めてそんなこと言われると、こっちとしても色々困ってしまう。
思わず熱い頭を抱き寄せて顔を隠すと、困惑気味の声が。

「こ、古泉?」
「本当に、貴方って人は……」
「なんだ、何か文句あるのかよ」
「文句というかですね、反論がありまして」
「反論?」
「ええ」


貴方より可愛いものなんてありませんからね。


可愛いだなんて、自分の顔を見てから言ってほしいものだ。
熟れた頬を俯かせ、恥ずかしそうに唇を尖らせる貴方の方が、どこの小動物だと問いたくなるほど可愛らしいというのに。
全く本当に。

「だいすきですよ」


ん、俺も。
なんてくぐもった声ごと、腕に閉じ込めてしまうくらいに。



触って話して、笑い合って。
小さな幸せをくれる貴方は、僕の愛しい恋人。






END.

………………
春菊の1000ヒットのお祝いに捧げます。
いちゃこらって話だったけど、いちゃいちゃしてる……かな?
くそう古泉羨ましい!
おめでとうございます!


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