造形を見る

ディルは九枚の女神の絵と、動かない虎の屏風を確認し、カーテンの隙間の暗闇に目を凝らす。
この世界で夜は明けない。同じように日は暮れないし、季節すらも移ろわない。

時間の区切りは存在しない。

だから、時計は必要ない。

指先に付着したルーシィの体液を、少しだけ舐めてみる。
粘っこい舌触りとかすかな塩気、白檀油か麝香豌豆に近似した、呪術的で蠱惑的な匂いがした。

「……これは、女が感じた時に分泌される液体だ」

「つまり、触られたから?」

「そうだな。性的な快感や興奮を得ると、出る」

「せいてきな、ね。よく分からないわ」

「はは。よく言えたもんだな」

そして、ディルは鋭く尖った牙で自らの爪を食い千切る。
右手の爪をすべて、深爪寸前まで短く刈り揃えると、驚いて茫然とするルーシィに、わざと音を立ててキスをした。

「ッ、爪……」

「こんなのすぐ伸びる。あと、本当の快楽ってのは、五感と精神と魂を総動員して初めて体感できるものなんだが……」

ソファからはみ出すほど大量の布地を押し分け、危険性を排除した右手で少女の下体を探り当てる。

指で触れると、反射的に膣口が窄まるのが分かった。さながら、無意識の拒絶のように。

「悪いな。俺には、お前の精神や魂を満たしてやることができない」

憂いを帯びた目を向けられ、ルーシィはますますディルの上着にしがみつく。
言いようのない不安が、腰のあたりから全身に広がる感覚があった。

「な、何が、ど、どうするの?」

「そうだな、どうしてやろうか……」

粘液にまみれ、きつく締まった少女のそこに、ゆっくりと中指をねじ込む。

「んッ、ぁあっ!?」

蠢く熱い粘膜は、彼の指に吸い付いて離れず、拒みたいのか誘いたいのか、判然としない。
その間にも淫猥な蜜は次々と滲み出し、ディルの右手を濡らしていく。

「……嘘だろ」

くわえ込まれた指はそのまま、震える人形を慎重にソファに横たえる。
白いブーツと乱れたドレスと、火照った身体。閉じられた脚の間に割って入り、彼女の秘所を明るみに出す。

途端、彼は身震いした。

「っとに……信じらんねえな」

大陰唇、小陰唇、陰核。官能的に高ぶる紅色に、煽るように塗りたくられた彼女の蜜。突き立つ男の指に怯え、小刻みにわななき続ける膣口。
腰から大腿にかけてのなだらかな曲線。

――馬鹿げている。




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