真の姿
「……急に増えたわね、いろんな人が」
ルーシィは頭の中を整理しようとする。
維持する者、運用する者、構築する者。
そして衣華。
「君が気付かなかっただけでしょ。でもそれは別に君が愚かってわけじゃないよ。君というオブジェクトにそこまでの機能が与えられてなかったって話」
「何なの、そのオブジェクトとか機能とか。わたしはロボットじゃないのよ?」
「人形よって言いたいんだろうけど人形もロボットも似たようなものさ。三原則こそないけれど君はただ一つあの子の友達になるという目的のもとに創られた単なる自動人形なんだから」
蔑ろにするような言葉に苛立ちが募る。
ルーシィは握り締めた拳を一度テーブルに叩き付け、大袈裟に息を吐いてからバルトと向き合うように椅子に腰掛けた。
バルトは無表情で首を傾げる。
「君はどうも怒りっぽいねあの子に会ったときは泣いてたし情緒豊かなのかな?でもあんまり笑ったりはしないよね。あの子はしょっちゅう笑ってるけど」
「怒りっぽくて悪かったわね。
それで?あなたは何なの?現実の寺の孫でも、夢の常駐組でもないんでしょ?いつもはぐらかされてばっかりだけど、今度こそ教えてもらうわよ」
「僕はしがない管理者だからほんとくだらないつまんないこと聞かないでよ。
どうしても知りたいなら教えてあげてもいいけどめちゃくちゃださいからやっぱり嫌だ。教えない」
「嫌なんて関係ないわ、教えて。あなたを信用するかどうかはそれから決める。
大体、そのつまんないことを教える教えないでグダグダやってる方がよっぽどださいわよ」
微かに、バルトが眉を顰めたように見えた。
怒りっぽい人形、というのもあながち外れてはいないなとルーシィは思う。
「……分かった分かった君はそういう部分を持った子だったんだね通りで通りで成程ね。僕は狐だよ」
「き、きつね?」
相変わらずの感情が欠落した声。
そして異質な単語をルーシィは繰り返す。
狐という存在は知っている。
小型の肉食獣で、尖った耳と太い尻尾と鋭い目。
「って言っても君が多分思ってる動物の狐とは違う存在だよ。僕は常葉神社っていう小さな稲荷の眷属の片割れだったのさ要するに神様の遣いだね。それがちょっとした手違いで帰れなくなっちゃって反逆した今は畜生の野狐とほぼ変わりないまで堕ちてる」
「狐……狐が、どうしてそんな姿になってるの?夢だから?夢だから、特定の人間を騙って、衣華ちゃんを騙してもいいっていうの?」
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