戸籍課
1.
燦燦と輝く太陽、8月。
「ですから日本の法律では認められませんから」
「それって憲法で認められれば結婚してくれるって事ですよね?」
「違います、どうか御自身の職場へお帰りください」
「あぁ!その目が俺を捕らえて離さないです!凶器です!ですから早くここに署名を!」
「本当、ここまで会話が成り立たないと呆気にとられます」
心底うんざり、とでも言いたげな溜息を漏らすのは
伊東 心、28歳、花も恥らう三十路前。
そんな伊東にヨコシマな視線を向けるのは、
九十九 総司、24歳、泣く子も笑う、世に言うイケテルメンズだ。
「はぁ、外の暑さに何か大切なモノでも溶け出してしまいましたか?」
「伊東さんのその眼差しに見つめられるだけで、俺の心と下半身は…」
「お帰りはあちらです!」
今ではこの東区役所内の誠に遺憾であるが名物とまで言わしめた言い合い(九十九は愛の語らいだと声高に主張したい)が始まったのは今から季節をひとつ前、青葉茂る5月にまで遡る。
戸籍課
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