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戸籍課
7.

「よー、朝から疲れた顔してんなぁ」
九十九と別れ、職員口に向かう途中、背後から揄うような声がした。
「木々間さん…はぁ」
「おい、人の顔見て溜息吐くなよ」
「すみません、ちょっと朝からイヤなものを、」

数分前に見た、否、見つめられたあの瞳を思い出して背筋が震えた。

「何だ?昨日の九十九だっけ、かにでも会ったのか?」
「・・・・いえ、」
「会ったンだな」

あっさりと見抜かれて、渋い顔をする伊東に対して、木々間はニヤリと人の悪い顔で笑う。

「何だか面白がってませんか」
ジトリと少し上にある木々間の顔を不満を隠そうともしない表情と声音で撥ねつける。

「いや、俺はイイと思うぜ?色男だし、なんか忠犬っぽくねぇ?」
「どこが犬だか」
はぁ、と小さな溜息と共に吐き出された伊東の否定を木々間は口もとの笑みを濃くして食い付く。
「なんかあったのか?」
「いえ」
「まだ、ないって感じだな、そーかそーか、何か発展あったら教えろよ、」

どんな人に、どんな事を言われても(それが罵倒に近いものであってもだ)眉ひとつ動かさずに対応していたこの型物で冷たい友人が嫌悪を隠すこともせず眉を顰める姿に木々間は楽しくて仕方がないと、思う。

なんか、コレって、結構おもしれェ事になってんじゃねぇか、?

「…もういいです、あの人の話は、それより木々間さん早く行かなきゃ、課長に怒られますよ」
「イヤなこと言うなよ」
「お返しです」
「テメ、ま、俺は応援すっけどなぁ、九十九ってやつのコト」
「人事だと思って…!」

にやにやと人の悪い笑みを浮かべたまま片手を上げ職員口を潜る木々間の後姿に、伊東は奥歯を噛みしめた。

木々間さんぜったい楽しんでる…!
でも、まぁ、あの肉食獣を彷彿とさせる瞳は頂けないが、マリッジブルーの反動だろうし、時期に収まるだろう、

数時間後、この時気楽に考えたことを伊東は後悔することになるとは未だ知らない。



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