小説
『はからずも地球上の生き物代表になってしまった話』
伊草(いくさ)
:高校生。なぜか地球代表。
フエルベ
:わかりやすく発音するとフエルベ。最強。
☆…☆…☆
いったいこれはどういう状況なんでしょうか、というかなぜ俺は1人?
『あのさぁ、だんまりされちゃうと困るんだけど』
「…ゴメンナサイ」
彼の…いや彼のでいいのか?
まあとにかく目の前のやつの名前はフエルベ。聞いて驚け、現在地球各地で侵略作戦展開中の、異星人の1人だ。
1人はおかしいのだろうか。でも1匹は失礼だし。
ようはつまり、エイリアン。
どうしよう死亡フラグだ。
『だから考え込まないでってば。ちゃんと翻訳機動いてるよな?』
「は、はい!」
『で、少年はどなた? 俺はフエルベ。記憶が確かなら、偉い人おいで〜ってやったんだけど』
「…ですよねぇ」
そう、そうなのだ。
このフエルベさん、実はエイリアンの親玉。というわけではない。話の流れ的にそれっぽいけど全く違う。
フエルベさんは、エイリアン方が泣いて怖がる(この人の話してるエイリアンはがたぶるしていた)、宇宙の犯罪者らしい。
そして一昨日、フエルベさんは各地で交戦中の地球人に声明をだした。
――『助けてあげてもいいよ。ただ、無事に来れたらの話だけどねぇ』
そんな内容に、各国のお偉いさんが食いついた。特殊部隊に警護された偉い人らがやって来たのだ。
指定された場所は東京タワー。スカイツリーじゃないあたり流行おくれ…なのか?
で、なぜ“やって来た”かと言うと、俺は最初から東京タワーにいたからである。
最初の攻撃のときに東京タワーにいたもんだから、出るに出れなかったのだ。
にしても、上にそんな恐ろしいエイリアンがいたとは気がつかなかった。道理で東京タワーだけ他のエイリアンが来ないわけだよ。
「し、下で寝てたら」
『あ、君が下にいた人間か』
「なんか偉い人らに、保護としてここまで…」
『で、君だけ一番最後のトラップにも引っかからなかった』
最後のトラップってなんですか。もしかしてジタバタ動いてる網ですか。今までのトラップと比べてだいぶ古典的じゃあないですか?
そしてなんで引っかかってんですかあんたらぁぁぁ!
『どうするの』
「え゛」
『俺にどうしてほしいの。君が俺に何かくれるんなら、助けてあげるよ』
「…いや俺、ただの高校生」
『なんのために来たの』
巻き込まれただけなのに!
「なにかって、たとえば?」
『この星で貴重なものかな』
「…」
貴重…石油とか宝石とか鉱脈とか? でもこれ約束したところであげられる確約できなくないか。だって俺ただの高校生だよ。
「…」
じゃあトリュフとか食べ物? てかこの人あれじゃんエイリアンじゃん。地球人の食べ物が食べ物かわからないじゃん。
『まーだー?』
「ろ、労働力!!」
『は?』
「労働力の提供! 助けてくれたら、いくらでもタダ働きします!!」
多分貴重。タダ働きだし。
『…そうかそうか、君はアホの子なんだな』
「…へい」
『はい、ね。うーん…どうしようかな』
「是非とも条件を飲んでいただきたく…」
『……タダ働き』
「はい」
『…まあ、たまにはいいか』
フエルベさんが頷いた。
ぽかんとしていると、すたすたとこちらに歩いてくる。
『地球人の寿命は?』
「…日本男性なら76前後だったような」
『まあ妥当か。いいよわかった。君の一生と交換だ』
「よ、よろしくお願いします!」
☆…☆…☆
20XX年、8月。
7月から開始された異星人による侵略作戦に転機が訪れる。
『はいはい終わりにしましょーねー』
「ふ、フエルベさん…」
『なに』
「…軽いっす」
『軽いかな。いいじゃない。片付けば一緒だよ』
異星人の犯罪者フエルベが突如侵略作戦本部を襲撃。エイリアンは総崩れとなり、地球人側が迎撃を開始。
『まあこんなもんでしょー。観光したいな。伊草、ピラミッド行こうか』
「いや飛行機ない…」
『問題ないってのよ。ほら宇宙船あるし』
「それ敵さんのですけど!」
こうして、地球に平和が戻った……?
【了】
☆…☆…☆
目が覚めたら午前中が終わってエイリアン出てくる映画やってました。
あんまりにもシリアスだったもんで、つい。
これから伊草くんは某海外ドラマばりに、宇宙やら過去やら未来やらにつれ回されることでしょう。
捕捉
フエルベ→人型エイリアン
侵略作戦エイリアン→昆虫的なエイリアン。甲虫よりゲジ。
伊草くん→学校サボって東京タワー見物に。1人逃げ遅れ。
フエルベさんは全宇宙をまたにかける犯罪者。昆虫エイリアンが楽しいことしてる〜と見物ついでにちょっかいを出すことにした感じです。
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