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小説
【勘違い誘拐事件D】
『火の海で座礁事故?』

先日×日、第7都市近郊を航海中の船が爆発炎上した。船の持ち主は都市議会議員で、事故の原因については「現在調査中」とコメントした。

船内には20数名の乗組員がいたとされ、いずれも救命ボートで避難しているのを発見された。全員に怪我はないが、一名の乗組員が「あいつは死んだんだ!」という発言をしており、第7都市火ノ番ではリストにない乗客がいたのではないかと調査を進めている。

☆…☆…☆

「…」

仙は新聞をテーブルに投げ捨て、偶然広がった事故現場の写真に両手をついた。

ひしゃげた船体、半分以上は火の中に沈んでいて、無惨な姿をさらしている。

たとえ中に誰かいたとしても、確実に無事では済まない。

「…蜂」

誘拐事件の一味は蜂が表に引きずりだした。

とすれば、この怒りをぶつけるためには…。

手にとった魔術具を、仙は。
















「どう責任をとるつもりだ! この単細胞!!」
「うっわひでぇ!」

蜂に向けた。

「…なぁんか、平和ね」
「そうだねぇ」
「どこが!? 二人とも見てないで助けろって!」

白髪から角が見えそうな仙と、それから

逃げる蜂。いつも通りだなぁと月雅が笑った。

「お前の仕業だと確実に狸爺にバレている!」
「えぇ? いくら天原名誉市長だからってそれはないだろ」
「船半壊って聞いて連絡とったんだ、仙が」
「マジで? ってか宴さんくつろぎ体勢に入んないで!」
「船から逃げれたんだから余裕でしょうが」
「微妙に怒ってる!?」

いつもと変わらぬ光景だが、少し前まで大変な騒ぎだった。

灰神楽から蜂がさらわれた際の船が爆発したと報せがあり、錯綜している情報より早いと天原源に連絡がとられた。

返答は「事実」というもので、救命ボートに蜂はいないと言われた。

何が出来るかはわからないが、とりあえず現場に…と、仙が扉を開けると。

『あれ、出かけんの?』

段ボール箱に怪しげな資料を山と積んだ蜂がいたのである。

「仙のふりすっげぇ頑張ったのに!」
「知るか。…というかなんだこの段ボールは」
「悪巧みの証拠」
「今すぐ捨ててこい」
「ひどっ! この為に船沈めたようなものなのにっ」
「そんな物騒なものいらん。火の海に捨ててこい」
「月雅ぁ」
「なぁに? 宴」
「正義の味方がいない…」
「いいんだよ」

月雅がにっこり笑った。

「僕らは静かに暮らせれば、それでいいんだから」

☆…☆…☆

オマケ

ぶぅたれていた蜂だったが、結局捨てるのに同意した。

「じゃあ、これだけ」
「写真?」
「設計図」

渡された写真を一瞥し、仙は流れるような動作で燃やした。

「ためらえよ!」
「部品の無駄だ」

相変わらずセンスがないと呟いたのは、誰の耳にも届かなかった。

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あきゅろす。
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