こねことおおかみ/完結
同室者
・・
「凛、しっかり聞くんだ。この世界はお前が無害だからといえ相手もそうだと限らない」
ガシッと肩を捕まれ、声を落とす馨にとりあえず頷く凛。
あ、馨ちゃん寝癖ついてる・・・と、視線は黒髪のてっぺんで跳ねる一房の髪へ。
「お前の同室者の柚羅宗昭という奴はな、この辺りで敵なし、最強不良。前の同室者は殴られて結局この前転校しちまった。いいか、さすがにお前みたいな小さ…一般人には手を出さないと思うが、なるべく関わらない様にすること」
ぴょこぴょこ動く馨の黒髪から視線を離すことなく、凛はまた頷く。
「俺たちと同じ1−Cなんだけど、今日もタケちゃんが言ってただろ?大抵授業もサボってるから空席だったとこ。あれが柚羅の席」
踊ってるみたいに動く寝癖が可愛い。
「噂によれば他人と関わることを嫌うらしい。連むのは市村って奴くらいでさ、俺達クラスメイトも柚羅達とはあんまりしゃべったことはないんだ」
「あ、隠れた…」
馨が動いたことでいなくなった寝癖を探す。
「そうだな、隠れるのもいい方法かもしれない。まぁ、距離を保てばそんなに悪い奴ではないから大丈夫だとは思うけど…何かあったら俺の部屋に来るんだぞ。分かったな、凛」
「ん。馨ちゃんの寝癖可愛いね」
「……聞いてなかっただろ…」
無防備な凛に不安は拭えない馨だったが、部屋割りに関して出来ることは無い。
友人の無事を願いつつ、「またね」と部屋に入る凛をただ見送ることしかできないのだった。
そして馨の想像通り、凛はというと
「…馨ちゃん、何の話してたんだっけ…寝癖?」
案の定馨の警告を全く聞いていなかった。
<*わんにゃん#>
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