こねことおおかみ/完結
涼宮凛
▽▽▽▽▽
林を抜けるのには思っていた以上に時間がかかってしまった。
しばらくしてなんとか校舎を発見することができた凛は、とりあえず職員室に行けばなんとかなるだろうとぽてぽて校舎内を歩いていた。
おっきい学校…
大きな窓は掃除が大変そうだな、と古びた窓枠を撫でながら静かな廊下を進む。
突然決まった父親の海外赴任
それに母が当たり前のようについて行くことを決めたため、突如全寮制のこの学校に来ることとなってしまった凛。
二人の仲のよさから考えて、それは自然な選択だったし、凛も都がいてくれるのでまぁさみしくないと、その決定を受け入れて今に至るのだ。
あ、ちょうちょ・・・
窓の外に目を奪われ、周りを全く見ていなかった凛の体に
ドンと衝撃が走る。
「うわぁっ…!!」
「……」
自分ではない誰かの声とともに突然背中を押され、
気づけばぺしゃりと床に押しつぶされていた。
重いなぁと思いつつ、凛はたまたま見つけた廊下を歩くアリを眺めていた。
動じない人間である。
「いてて…ってごめんっ!!大丈夫っ?!」
慌てた声がして、凛の背から重さが消えたと同時に凛の手は温かい手に支えられていた。
その手に助けられながらゆっくり身を起こすと、後ろから飛び込んできた本人であろう少年は頭を下げて謝る。
「ごめんな、先生に呼ばれてて急いでたもんだからさぁ〜全然前見てなくて!!
どっか痛いとこないか? ホントごめんな?」
眉をたらして申し訳なさそうに謝る少年をじっと見つめ、凛は小さく頷いた。
「そっか、良かった」
ほっと笑い、少年は凛の制服についた埃を、ついでに外で拾ってきた草なども一緒に払って綺麗にしていく。
そのさり気ない優しさに、凛のなかで彼はいい人に分類された。
「…ありがとう」
ほにゃり
「・・・・っ! いやいや、もっ、元はといえばオレが悪いんだしさ!」
ブンブンと手を振りながら
凛の無意識発動、破壊力MAXの笑顔を受けて少年は思っていた
こ、この子は危険だ…
それは単純な意味ではない。
いろいろな意味で、全寮制の男子校には危険がつきものなのだ…
<*わんにゃん#>
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