こねことおおかみ/完結
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「おーぃ、ゆずー?あ、いたいた。
こ〜んなとこでなにしてんの?
探しちゃったよ俺ー…って柚、聞いてる?」
聞き慣れたその声に、宗昭の頭は封印が解かれたように現実に引き戻された。
「おう…」
とりあえず口に出た返事は、自分で思っていた以上に小さい。
「そんなとこに屈みこんで…なに、変な虫でも見つけたわけ?」
からかうようにそう言って楽しんでいる市村亮平(りょうへい)を「うるせぇ」と軽くたしなめるが、
そんなことを気にもしない彼はからりと笑うだけだ。
亮平と初めて出会った頃のことはあまりよく覚えていない。
気づいたら一緒にいて、たまに血の気の多い不良を返り討ちにするようになっていた
いわば悪友のようなものだ。
「珍しくぼ〜っとしちゃって、どったの?」
金髪の長髪でゆるい口調。
その顔はモデルも太刀打ちできない程に綺麗に整っており、このノリの軽さでは当然ほとんどの人間にチャラく思われている亮平だが
空気の読める結構いい奴だと、内心思っている。
絶対に本人には言わないが。
「いや、今ここに…猫(みたいな奴)が…」
「はぁ?猫がいたから何ー」
「寝てて…」
こんな場所で小さな少年に会ったことも、
普段は誰も近寄ってこないような自分の髪を好き勝手混ぜていった出来事も
その時の宗昭にとってはあまりに非日常すぎて
状況の説明がうまく言葉に出来ない。
「なぁ」
そんな友人の珍しい様子に亮平は首をかしげつつ、宗昭の足元を指差して言った。
「猫ってそいつのこと?」
「ん…?」
「にゃぁー」
いつの間にやってきたのだろうか。
宗昭の長い足にすり寄っているのは、先ほど少年に抱きこまれていた猫、都だった。
<*わんにゃん#>
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