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こねことおおかみ/完結
2
「何で言わないのさ」


「え・・・」


馨の涙をそっと拭う手。
次々と流れてくるのでその手もすっかり濡れて意味を成してはいないのだけれど。



「留学の夢。そんな大事なこともっと早く言ってよねー」



あーもうあんな男に持っていかれるとか変な想像までしちゃったし・・・
違ってよかったーとかなんとか言って

ぎゅーと上から抱きしめてくる重さが心地良い



「亮平・・・・?」

そっと背中に手を回してみると、さらにきつく抱き締められてしまった。






「・・・・行けよ」

耳元で告げられた言葉


そのまま亮平が起き上がって、一緒に起こされた馨は膝に抱きかかえられる。


「っ・・・・でも」


その言葉は

思っていたよりも


嬉しい


けど


悲しくもあって











馨の目の前で形のいい唇が動く


「かおるちゃんは頑固で、まっすぐで、それでいて男らしくて。
 自分の夢を諦めるような男じゃないだろ?

 不安だとかなんとかでやっぱりやめる!・・・って。その程度の気持ちの奴なら留学してもどうせ挫折する。








 でもお前は違う」

「っ・・・・りょ、へ・・・」


目線を上げれば、すぐ近くの真剣な瞳に吸い込まれそうになる。
アーモンド形の綺麗な造型はこんな時でも視線を奪われる


優しさを滲ませられたらなおさら__



「あのね、俺は恋人の足を引っ張って夢を引き止めるような男じゃねぇよ?」

「・・・・・・んっ」


「・・・才能あるお前が、自分の力を試すって時に、応援しないわけねぇだろ。」


そんな顔で笑うんじゃねぇ



お前なら、そう言ってくれる気がしてたよ。

だから・・・・


「でもっ・・・」

「ん?」


やっぱり




「寂しい・・・・・っ」


「ふはっ・・・可愛い〜っ」


「・・・・・・・・」

涙を溜めながら
むっと唇を尖らせる馨。 

それでも頭を撫でる手は払わないのだが。







「・・・俺が不安じゃないとでも思ってる?」

「ぇ・・・・」


亮平の笑顔は寂しげになっていた


「かおるちゃんが外国で外人の女に誑かせられないだろうかとか、ふらふらと変な男に騙されてついていかないだろうかとか」


「んなわけないだろ!」



どんだけだよ、俺



「隙だらけだからさ、んも〜ほんっと心配。俺がいないとかおるちゃんったらぱくーっと食べられちゃうんだもん」

そんなばかな


「なっ!・・・お前がいなくても大丈夫だよ!」

食われるもんか









「・・・・・ん。かおるちゃんなら大丈夫だよ。頑張れる」

そう笑って頭を撫でる亮平に

馨は自ら顔を埋めた









「っ・・・・・・ぅうっ・・・」


「あちゃ〜泣かせちゃったか」



亮平がすっと自分の目を拭っていたことを馨は知らない

<*わんにゃん#>

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あきゅろす。
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