こねことおおかみ/完結
はじめまして・・・?
挨拶も終え、とりあえず宗昭は体を起こした。
上に乗っていた凛も一緒に起こされて、どちらからともなく二人は離れてソファに座りなおす。
「…」
「……」
奇妙過ぎる状況に、なんとなく気不味い。
実のところそう感じているのは宗昭だけで、凛は寝起きでぼうっとしてるだけであったのだが。
先に沈黙を破ったのは宗昭だった。
「・・・この部屋に入れたってことは、お前が転入生か?」
ゆったりとこちらを見上げ、それを肯定するように小さな頭がこくりと頷く。
「そうか…。柚羅宗昭だ。おまえは」
「…涼宮、凛」
紡がれた名前を、落とし込むように繰り返す。
「涼宮凛か……よろしくな涼宮」
「ん…よろしく」
凛は知らない
宗昭が誰かに名前を尋ねたのも
自分から相手に名乗ったのも
今、こうして優しく頭を撫でる手も
全部、これがはじめてなのだ。
・・・
大きな手のひらの温かい重みを感じつつ、宗昭をじっと見つめる凛。
もともと、凛もまたあまり他人に興味をもたない性格である。
人といることが嫌いな訳ではないが、一人の時間を好み
誰かと普通に会話をして関わりを持っても、ただそれだけのこと。
しかし、凛の頭の中で一度「いい人」に分類されてしまえば、
一転して相手への認識が変わる。いい例が馨であった。
いい人だと思えば、凛はすぐに信頼を置いて甘えるようになるのだ。
一見安易なようにも感じられるが、
実際は凛に存在するこの「いいひと」ハードルはきっちりと見極めたものであり、その判断はしっかりとしたものであった。
だが、なぜだろう。
宗昭を前にして、そのハードルは全く意味を成さなかった。
凛自身が不思議に感じるほど、
ハードルも、凛の判断も関係なくすべてを飛び越えて
宗昭は凛のなかの安心するところにぴったりとはまってしまったのである。
こんなの、初めてだな…
すりすりと猫のような仕草で、宗昭の手に擦り寄り目を細める凛
そんな凛の心中を知ることはなかったが、
しかし宗昭もまた、彼に初めての安心感を抱いていたのだった。
<*わんにゃん#>
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