こねことおおかみ/完結
3
▽▽▽▽▽
馨に見送られて部屋に入った凛は、玄関に置いてある大きな靴が目を止める。
「・・・・同室の人が、いるのかな・・・」
なんとなく思い出した説明で、二人部屋なのだと再認識する凛。
靴を脱ぎ、大きな靴の横に自分の脱いだそれをきちんと並べてみると、よりその大きさが際立った。
廊下の向こうにもう一つのドア。そこを開けた先はリビングだった。
大きめのテレビに気持ちよさそうな毛並みのラグ
リビングを挟んで左右の壁には二つドアがあり、きっと各自の自室なのだろうと想像できた。
部屋の中もまた凛の想像を軽く飛び超える広さで、うきうきと好奇心がくすぐられる。
対面式の立派なキッチンを覗いてから再びリビングに戻り、ソファに目をやった凛はふとあるものに気がついた。
「…あし…?」
ソファーの端から、足がにょきっと伸びている。
凛ならば、横になってもすっぽり収まりしまうほどの大きなソファーなのにもかかわらず、
寝ている彼には丈が全然足りていないのが見て取れた。
この人が同室の人かなと首をかしげる凛
馨がいれば「これだけ堂々と寝ていてむしろ同室者でなければ誰なのだ」と、つっこんでくれただろう。
足音を立てないように、そっとソファーの後ろから前を覗き込み、凛はハッとする。
「あ、…おおかみさんみっけた」
そこに眠っていたのは
今朝林で会った男、柚羅宗昭であった。
・・・
宗昭が起きないのをいいことに、ソファ下に座り込んだ凛はじっと彼を見つめていた。
「やっぱり髪の毛ふわふわだぁ・・・
触ってもいいかな・・・起きちゃうかな…」
見ているだけでは我慢できなくなった凛は、ふにふにと宗昭を触り始める。
あ、眉間に皺できてる…
でっかいなぁ…手も大きいね
さらにお気に入りの宗昭の髪の毛をもっと近く、より自分が楽な姿勢で観察したくなった凛は、大胆にもその大きな体の上に乗りあがった。
宗昭は一度顔をしかめたが、目を覚まさない。
凛はじっと宗昭の顔を見つめる。
自分とおそろいの、同じ色の髪は凛を自然と笑顔にさせる。
凛が乗った大きな体はしなやかに筋肉がついていて
安定感があり、なにより温かかった。
「いい匂い…」
彼の首筋の方からする香りに、かつてない安心感を覚えながら
凛は無意識にその胸に頬を擦りつけ、夢の中へと旅立った
<*わんにゃん#>
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