こねことおおかみ/完結 2015号室 ▽▽▽▽▽ 柚羅宗昭は戸惑っていた ・ ・ ・ 彼は多少不本意ながらも自他共に認める不良である それも無敵の最恐不良という異名がつくほどで 滅多なことでは動じない。 悪友の市村亮平がどんなにちょっかいを出そうと、 リベンジを試みる不良たちが闇討ちをしようと、 彼は驚いた素振りもなく事も無げにかわして来た。 そう、滅多なことでは動じないのだ。 ・・・ そんな柚羅宗昭は 今確かに自分が動揺しているのを自覚していた。 原因は 彼の上に乗る物体にあった。 ▽▽▽▽▽ 亮平と別れた後、宗昭は授業に出ることなく寮に戻って来た。 あいつ…初めて見る顔だったな… 寮までずっと付いてきて離れない都を一見し、宗昭は林で見つけた少年の顔を思い出していた。 宗昭はこれまで他人に興味を抱いたことが無く、 生徒のほとんどが知らない顔である。 小柄な体から見ておそらく1年だろうとあたりをつけるが、 同じ制服を着ていなければ、彼を高校生と判断することは難しかっただろう。 ふと、自室の前で足を止め、 とうとう最後まで付いて来た都をじっと見つめなら考える。 「・・・・・」 宗昭について来た理由こそ分からないが、 この猫もまたこれまで見かけたことがない。 やはり彼が主人なのだろう 「お前がいれば、またあいつに会えるか…?」 返事をするような短いひと鳴きが、廊下に響いて消える。 言葉が通じていると思うわけでは無いが、なんとなく都が自分の問いかけに答えてくれた気がした。 動物に懐かれるのは初めてだが、悪く無い。 「入ってもいいが、静かにしてろよ」 ドアが開いた少しの隙間から、迷うことなくするりと部屋へ侵入した猫に小さく笑う。 こうして宗昭は部屋の中へと都を受け入れたのだった。 <*わんにゃん#> [戻る] |