メフィスト
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 紙をとりあえず、近くの地面に投げた後で俺はめいいっぱい酸素を吸い込もう、と呼吸をした。
 視界の横では名前も知らない植木が、日光に照らされてきらめいている。というか、暑い。
夏を物語るようだった。

頭の片隅で、誰かが勝手に投函していく紙のこと、行き先を把握している謎のストーカーについてを考えてみる。
同一人物がやってるんだろうか。

きっと、この名前の人物について何か思わせたいのだろう。

それがあいつの自分の名なら、こんな風に捨てるみたいにして俺に見せないはず。
あんなにぐしゃぐしゃだと、うっかり見逃すかもしれないから、主張の強そうな彼には向かないと思う。

背伸びをして、遠くを見つめた。







視線を感じやしないかときょろきょろ辺りを見渡したが誰もいなかった。
くだらないと呟きかけて他人を意識して強く見下すようになるとおしまいだよと、ばあちゃんが言っていたのを思い出した。
必死になって語気を強めるのは、心が寂しいからで、どうにかして悪口を考えるのは頭が寂しいからだとかなんとか。

危なかった。
今、どちらも寂しい人間になるところだった。


 その後、課題をするために部屋に居たらどたどたと足音がして母が帰ってきた。
「ただいまー」

買い物袋を両手にさげて、疲れたようにしているので、二つとも持って家に入りやすいようにした。

「お疲れさま、何買ったの」

「ん? お米とか、野菜とかセール中だったのよぉ」
「あ、そう」

暢気に笑う姿を見て、
俺より倍生きてることをつい忘れそうになる。

「台所に運んでおくね」

袋を抱えて歩いているうちに、なぜだか外に行きたくなった。

「あぁそうだわ、そこのゴボウ、
テーブルにあげといて」

「ゴボウね、はいはい」


ゴボウ。ゴボウか。
と意味もなく繰り返した。


荷物を運び終えると、さっさと二階に戻る。



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あきゅろす。
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