メフィスト
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 きっと、俺はとんでもなくずるいやつなんだろう。だめと言われたら、やりたくなるタイプでもある。

クラスメイトを指差して明日あいつは敵チームだと言われたって、どこか緊張感がなかったりしていた。
頑張ろうぜ、なんて言いにいってしまうくらいに。

「わかる。秋弥は本当そういう部分頑固だよ」

なっちゃんが、困ったように、でも愛しそうに言った。

 彼が俺のために困った顔をしてるのを見るのも好きだ。
俺のために困っているんだと思ったらつい、わがままを言いたくなってしまう。

「俺のモットーは必要がないことでは戦わない、だから」

「なにそれ」


ははっ、と彼が笑った。俺も笑うふりをした。
うまく笑えないのは、やっぱり騙しているみたいで苦しい。

「逃げなんじゃないのか」と、いつか、言われたことがある。
「大事なものを選べないならみんな失うかもしれない」と。

 色組になるのが嫌だったし、大事なものを選べなくて失うのなら大事なものは何も選ばなければいいと思っていた。
俺としては逃げたわけじゃなくて、明確な意思を持ったつもりだ。選ぶ必要も叶う意味もないから独りになるよていだった。

__そんな覚悟は甘い、とバチがあたったのだろうか。

「あー、あ。ずるい……」
「何が」

俺はなにも言わず弁当を全部平らげてから、こっそり呟いた。
 意地でも選ばなきゃいけないような、この状況が。 並んでいる机や椅子、黒板、教卓、窓際側と、廊下側。
それから教室に入るクラスメイトたちの、あのざわざわとした落ち着かない雰囲気が俺は好きだ。
 学校を嫌いなやつがいても、それはきっと、勉強や友人がであって学校自体じゃないだろうと俺は思っていたし、実際、家に居るより楽しかった。
だから、風邪でこられないやつを本当に心配したし、疲れたあとの夕飯も好きだった。

 放課後。
河辺の姿を探してもいないから、いろんなやつに聞いて回った。
どうやら彼はもともと、滅多に登校しなかったらしい。
理由を聞いても誰もが笑顔で話題を逸らしていたけど、たぶん、彼は孤立しているのだろう。

 俺の前でも妙な奇声をあげたり、空気を読まずに牛か瓜坊みたいに体当たりしてくるところはあった。ただ、原因はそれより根本的な部分な気がした。

 詮索しすぎもよくないし、部活に顔を出すかと廊下を歩いた。

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あきゅろす。
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