ソウリモノガタリ
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「つまり、身体の作り自体は普通の寄生体と変わらないのだが。ならばきみたちも聞いた、あの曲をどこから出しているのか。恐らくだが、神経と結び付くように寄生する形体からしても……たとえば脳にある音楽領域へ彼らが干渉することが出来るのだと思う」
「しかし博士、みんなが同じ曲を聞くなんて可能か?」
アリンが訝しげに博士を見る。
「可能かなんてのは寄生体でもない私に、わかるはずないだろに。じゃが、言語領域の一つと捉えると、皆が大体似た聞こえかたをする。しかし仮に、言語や聴覚の領域にあの曲を流せるとしても……」
「あ、あの生物?たちって普通は、声帯はないってことですか」
リセがぽつりと声を挟んだ。
「私たち、わんちゃんの声を聞きました」
博士が、カッと目を見開く。
「ふーむ、なるほど!
確かに『乗っ取って』能力を得ている、だとすれば恐らく容易に声くらい出せるちょん、
知性の点に置いても、彼らが独自に思考するとは考えにくい。なにか本体を見なかったかにゃ?」
本体は別にいるという見解は皆一致したらしい。
「それが、私たちも、見ていなくて」
エチルが冷静に答える。3月10日23:08
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