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「独りは禁止」
ばーん、と書かれた一言に、わたしは打ちのめされそうになるが、辛うじて虚勢を張った。
「大袈裟だなぁ……」
「おーげさじゃないよ、クローンによる襲撃は、各地で起きているんだから」
「だって、私たち純血とは相容れないってだけの話で、殺害だとか傷害だとか。リアクションが大袈裟すぎない?
いまいち現実味無いよ。
極力関わるのをやめようって発想、できないのかな」
「それが出来れば苦労しないよ、クローンだけに」
「やかましいわ」
改めて言う。
「でも殺害の問題は一部のクローンたちだよ。みんながみんなだったら全滅してる」
この社会が築かれて、もう10年経とうとしている。
「クローンを、古来の原種に出来たらいいのにね。自分に自信が無いのかも……」
フィルがどやっとしながら、門の奥へと進む。
自信というか、病の関係じゃないだろうか。
「フィルはありそうだね」
「妬むほどに理想との距離は遠くなっていきますから」
「どゆこと?」
「真逆のことをしてる時点で、別人証明じゃない? 相手が好きなものを嫌いだったりとかー。嫌いなものが好きな時点で、あり得ないんだよ、重なることは」
「確かに」
「殺したって、傷つけたって
露呈するのは違いだけなのにー。遠くなり続けてるのに」
何がしたいんだろ。
フィルは、青空をぐいっとあからさまな見上げかたで見てから、また歩きだした。
わたしにもフィルが何をしたいかはわからなかった。
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