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 ラコは咄嗟にふところから大型のブーメランを取り出した。
「やめなさいッ! 命令よ! タロウ!」

このブーメランは振り上げるとムチのようにしなるので、近距離でも使うことができる。
投げ方次第で刃物のような切れ味があった。

くるくると周り、ブーメランは影に直撃する。
それが唸りをあげてよろめいた隙に、ラコは距離を取る。

「タロウ」


 雨の日も、風の日も、タロウはそばに居てラコを見守ってくれた。

「うぅ……うええええん、タロウの能無し! ハゲズラアアアア! うわああああん!」

涙が、ぼろぼろ溢れていく。
タロウはもうラコを昔のような暖かい目で見てくれることはなかった。

「ギョアアアー!」

それは寄生をあげながら、暴れ、再びラコに向かってくる。
タロウがいなくちゃ、家事も出来ない、おやつも出てこない、またひとりぼっちの毎日だ。
ラコは悲しかった。

「ミュンヒハウゼン!」

周りを見ていなかった彼女は突然叫ばれてはっとした。
影が何か、力をためているような気配を感じた。
慌てて身構える。

「閉じ込められて、これじゃあ、まずいかもしれないわ」

デンシンが冷静に呟く。

「ど、どうにかしなさいよ!」

ラコは赤い目をして言った。

「今から、私が術を使う。お前は、しばらく引き付けておいてちょうだい」



20196/218:45



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