2019年2月28日22:15


 部屋に出てしばらく廊下を付いていった。
途中黒い魔物に襲われかけたが、私たちはどうにか倒し難を逃れた。
 その道でルチアノが私に告げたのは、驚くべき事だった。

私が持つ本。
いつも肌身離さず手にしていた古い百科事典。

「『管理者』が持つ禁忌の原本と言われるもののひとつ、それを間近で見られたわ」

それ、を見ながら、ルチアノは言う。


「禁忌?」

 クローンと純血の人間が今のように分かれていなかった頃に描かれたもの。

「例えば古い東国にある『桃の男のはなし』……知らない?」

「いいえ」


「世界をかけた大戦争が起きたときに、主人公は軍のモデルにされたの。そしてあちこちで原作の手を離れ、戦いの物語へと変わっていった」



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