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怖いよ。
寂しいよ。
外に出たい。
大声で泣き出したかった。けれど声も枯れている。
一番怖いのは、この身が滅びることではない。
「私が……私が、やらなきゃ、いけないの! 私が。私の、約束なの……」
結界に、両手を強く叩きつける。
このままでは間違った術が呪いとなり、此処を滅ぼしてしまうだろう。
タカナにも、マイにも出来ない。
『血』が違うのだ。
所有者が気を遣い続けてきた、日々唱え続けてきた全ての祈りを『無』に変えてしまう。
――お姉ちゃんや、私の『願い』が消えてしまう。
全ての努力を、思い出を、全ての時間を潰されたら。
その世界で生きていたって意味がない。
何をしたって、他のものでは取り戻せない。
だって、あれは――――
「お願い。これだけは……私が、やらなくちゃ、いけないの! マイやタカナや、他の人ではいけないのよ!
代わりなんかないの!」
どうか、叶えて。
ぎゅっと目を閉じる。
少女は強く願った。
闇のなかから、優しい幻聴が聞こえる。
「好きだよ」
誰かが優しい声で私に言い頭を撫で―――
やっと独りではない。
そう、光に手を伸ばそうとして……
振り払われる。
『そんな人いるわけないじゃない!』
あれ?
優しい声は、瞬時にすりかえたように誰かの叫びに変わっていた。
誰かの鋭い視線が降り注ぐ。
「どうしてそんなこと、言うの?」
嘘つきな人だと思って面白がっていたから、私を、そんな、目で……
――――パリン!
ガラスが叩き割れたような音。
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