びたえあ
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幸せにならないボクは代わりの誰かの幸せを作って、それはボクなのだ。瓶の中にいる自分を、救えないままだ。
愛される『鏡の国』を見て、ボクはやっと嬉しくなる。薄いガラスの向こう側が幸せになれば、ボクに反映される。
瓶の中に居るボクは、まだ、瓶の中にいる。
「……お茶を、いれましょうか?」
「リュートのぶんだけでいいよ」
ボクは眉をひそめる。
「俺は、あなたと一緒に飲みたいのですがね」
いつも通りに彼は苦笑い。
「……」
頭の中では描ける。
お茶を飲むくらいが、できないわけではない。
リュートが部屋から出ていく。
ボクはただ、そこに立ち尽くした。
なにも言わない。
言えない。
昔、ボクはこんな状況でカップを叩き割ったっけ。
飛び散る褐色を浴びて砕けた破片を眺めてた。
ただ淡々と。
ボクは飲めなくて。
受け取れなくて。
許せなくて。
不安で。
おかしくて。
叩き割ったら愛されている気がした。
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