びたえあ
番外編 ストレス発散

 ボクは、いじめは正しいと思う。

ただし、内容によるのだ。
前から気に入らなかったと呼び出した連中を、ボクも前から気に入らなかった。
早いところ蹴りをつけて、徹底的に嫌ってもらおうと画策する。


そして、その一人。

人があまりつかってない歩道橋の真上。
晴天の下で、土下座する男を、ボクは捕らえていた。


「前から、ボクになら何をされてもいいって言ったよね?」

夜中に、しわしわの焼き魚みたいな顔をした男が、目の前に倒れていてボクはそんな言葉を吐いた。あぁ、ボクがやったんだっけ?

「じゃあ命令しようか。仲間を殺してこいよ」


他人に対して、なんでも、なんて言うのは簡単なことだった。


だから、気に入らない。
気にくわない。

簡単に言うのなら、それ相応のことを、言わなくちゃね。


ボクは、そう。

にやりと笑った。


「……聞いてる?」


「……るかった、わるかったよ」

焼き魚は地面に頭をつけたまま、苦しそうな声をあげている。

「お前を襲おうなんて間違いだったんだ」

「そんな、今更に。
誰にたいしても間違いだよ。

なにをいってるの?


そして、ボクは、なんでもできるとか、何をされてもいいとか言うやつが大嫌いなんだよね」


はやく。はやく。

「何をされても良いんだろ? 仲間討ちとか、最高じゃないか!」




さぞ壮観だろうと、ぞくりと身体が震えた。

「なんでもするんなら、早くやれ」

あはははは!

笑いが止まらない。
もし成し遂げたところでボクはこいつに何も思わないだろうし、やらないところで、やはり何も思わないのに。



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