びたえあ
2.へんなやつ
風呂につれていくと、そいつは辺りをきょろきょろしていた。
「すごいとこに居るんだね」
「……あんたは、家は」
「なくなって、道で寝てた。なにも覚えてない」
「変なの。まあいいや、ボクは、別に助けてないからね」
「あ、で、でも」
おろおろしている。
ボクはなんだかイライラしながらも、部屋から持ってきた服と下着をはい、と渡す。
黒い石のタイルの上に、そいつの白い足は映えて見えた。
「早く洗え」
それだけ言って、ぴしゃりとガラス戸を閉めた。
その後、客よりお付きの人が多いデパートみたいに廊下に居た暇そうな一人に声をかける。
「何がいいか全然わからなかったけど」
コンビニで買ったにくまんを、人数分どさっと押し付ける。
必死すぎるくらいの礼を言っていた。
こんなに必死だと、ちゃんと食事をもらってないのだろうかと疑ってしまう。
「お墓参りは、いかがでしたか?」
「相変わらず」
「沢山お話できましたか」
「まあ、ね」
途中で帰っちゃったけど。
「でも、ちょっといろいろあって『全部』を周り切れなかった」
「さきほどの方は……」
「そう。それを拾ってたら、夜遅くなったんだ」
「そうでしたか」
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