38.デジャヴ 「あ…ぁ、」 真っ赤な世界に たなびく君は、もっと綺麗な真紅 綺麗すぎて、おぞましすぎて 悲鳴さえあげられない私は、 なんと愚かで滑稽なのだ。 幾度となく、思い描いた最悪の結末 そうしていつも、嫌な汗が頬を伝い目が覚めた。 まるで君の死が、これが初めてではないような錯覚。 ねぇ、私が目覚めれば君はまた傍で笑ってくれているのだろう? 遠くで揺れる君の影が、まるで私を探しているように見えて寒気がはしる 君は来てはいけない 真紅に染まった君を見てしまっては、夢から覚められなくなってしまうだろうに しかし、私の足は確実に君に近づいていく。 「へ…すけ…?」 か細い、消え入るような声を絞り出す君は とうとう間近にまで来た私の胸にトサリと身体を預けた。 弱々しい鼓動、鼻の奥をつくような真紅の匂い リアルな夢、君の髪の毛を優しく鋤きながらぼんやりと思う なぁ夢なら早く、覚めてはくれないか この子の笑顔を見たいんだ いつの間にか、鼓動の音は聞こえなくなっていた ____ 兵助ぇえ?! =? [戻る] |