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その聞いたこともない冷たい声に、ザックスは目を見開く。
ナマエはゆっくりと、膝に埋めていた顔をあげる。そして、此方に視線をよこした。
その瞳に、瞳孔が開ききってしまった目に、光は映っていなかった。
「帰る場所なんて、ないよ」
「なに、言ってんだ…」
「あ、それにね」
「帰るつもりも、ないよ」
ナマエはそう言うと、音もなく立ち上がる。
そうして、ザックスから背を向けるように歩き去ろうとした。
しかし、ザックスがそれを許すはずもなく。
「待てよ!」
「…。」
「帰るつもりはないって?…なら、お前はどこに行くつもりなんだよ!」
本当は見当はついていた、だがザックスは、ナマエ自身から聞かなければならないと思ったのだ。
ナマエはピタリと足を止めて、プレートの隙間から見えるミッドガル郊外を見据える。
「そうだなぁ…兄さんのところ、かな」
「!」
ナマエは胸元から、あの漆黒の羽を取り出す。
それをくるりと回して、目を細めた。
「ジェネシスがまだ生きてる保証は、ないんだ!」
「いるよ、兄さんはまだいる」
「ナマエ!目を覚ませ!!」
「…ねぇ、しつこいよザックス」
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