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キッチンからは温かくていい匂いが漂う。まな板の上の切り終えた材料を鍋に入れて、火力を強くする。
そんな作業をやっている間も、ナマエの気配は退くことはなかった。
レノは鍋の蓋をしめてキッチンの入口に目をやる。
そこにはやはり、寝間着姿のナマエが虚ろな視線を床に向けて立っていた。
レノは軽く溜め息をついてナマエのそばによる。

「すぐ出来るから寝てろ」
「…やだ」
「やだじゃねーの」

レノが頭を撫でて促してやれば、ナマエは嫌々と首を横に振る。
どうしたものかとレノが困りはてていると、ナマエはレノの服の裾を掴んだ。

「…ナマエ?」
「…ぁい」
「?」

良く聞き取れなかったレノが、少しかがんでナマエを覗き込む。
少しかすれたナマエの声。

「独りは…恐い」

それを聞いたレノはハッとした。
ナマエの裾を持つ手が微かに震えていた。

「…分かった。じゃあソファで寝てていいから」

ナマエの肩に手を回して、ソファへ促す。しかし、それでもナマエは首を横に振った。
どうしたものか…と、レノは頭をガシガシとかく。


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あきゅろす。
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