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これを朝、ペタリと顔に貼り付けるのがナマエの習慣だった。顔にたまっていた熱が吸い取られて、気持ちがよいのだ。
しかしそのタオルを絞りながら、ふと心が軋んだ。
前は、いつもザックスがこれを作ってくれていて…
『ほらよ!』
毎日、寝坊してトレーニングルームに入ってアンジールに怒られて
ザックスから、これを貰ってた
いつもの、あの笑顔で
「おーい、いつまで洗面所にいるんだ」
「ん」
タオルを顔に貼り付けたままぼうっとしていたナマエの後ろから、レノが顔を出す。ナマエは一瞬ビクッと肩を揺らすが、すぐに頷いた。すると、レノがスルッとナマエの額に手を乗せる。
「熱は下がったな」
安心したと微笑むレノに、ナマエは鏡越しに柔らかく笑う。
いつの間にか、タオルは生温くなっていた。
「お前、朝食抜きで仕事に出る気か」
「用意してあると思わなくて…」
テーブルの上にはバターの塗られたトーストとサラダ、湯気の浮かぶコーンスープが置かれていた。
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