give-and-take-and-give
たくさんたくさん
私は君からもらってばかり
偏りってよくない、かもしれない
私は君に
何をしてあげられるのだろう
--give-and-take-and-give--
「あれほど言わせてもらいましたけど」
「しちまったもんは仕方ないだろ」
花売りワゴン作成の一日目が終了時点で、
ザックスの指には数カ所の痛々しい切り傷が出来上がっていた。
思い切りの良すぎる彼のノコギリ手さばきは荒々しく、ナマエは隣で何度悲鳴を呑み込んだことだろう。
帰りの列車の中、さりげなく怪我をした手を隠そうとするザックスの腕をナマエはグイと引き寄せた。
「“ケアル”」
ザックスが目を見開いているうちにその手を両手で握り、詠唱を呟けば暖かな光が溢れる。
「マテリア持ってたのか?」
「もしものためにね」
案の定、君が怪我をしてくれましたから
ナマエがギュッと強めにその手を握ってやれば、治りかけの傷が軋んでザックスは顔をしかめる。
「いってぇ」
「ほんと、不器用」
しばらくして怪我が感知した頃、
ポツリと小さく呟いて、ナマエはザックスのその手の甲に唇を寄せる。まるで慈しむように、あるいは物語の騎士のように。
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