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さっきのはつまり、遠回しに「怪我しないで」と言っていたのだということに。
ザックスが物騒な言い方と称していたのは、それに気付いていたのだと。

ナマエは時節ビクッと肩を揺らす。それはいつもザックスの手元が狂う時だった。
けれど、もう手を出しにいかないところを見ると、ザックスが手助けを望んでいないことに気付いているようだ。
だから彼女はそうとうに耐えている。




「うらやましい、かな」

「え、?」


ポツリ、そうエアリスは小さく呟いた。それはノコギリの雑音で消されかねない音量で、ナマエにだけ届いた。
ナマエは我に返ったように隣のエアリスを振り向き、首を傾げる。


「エアリス?」

「…すごく心配そう、ナマエ」

「!…あれじゃ、日が暮れちゃうから」


ナマエは困ったように笑って、ザックスに視線を戻す。その横顔にはほんのりと朱がさしていて、少し不本意そうに眉根が寄っていた。


「不器用な癖に、一生懸命だから」

「うん」

「出来上がったら、ほめてあげてほしいんだ」

「…うん、」


まるで過保護な母親ともとれる、しかし、それを茶化すにはあまりにも彼女の空色の瞳は優しすぎた。




そんな彼等を、凛々しい獣が上から見守っている、穏やかな午後の日。




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あきゅろす。
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