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「なに、嬉しかった?」
「だ、誰がッ」
火照った頬を両手で挟み鼻先を近づけてやれば、ナマエは悲鳴は出さないまでもわなわなと、こらえるように震えていた。
恥ずかしいのを耐えているその様子が愛らしく見えて仕方なく、ザックスはその鼻先にキスをする。
ドゴッ
そうすれば、もはやナマエの拳が飛ぶのは必然であった。
「やっと、ついた…」
「なんでそんな疲れてんだよ、さっきの拳に全精力使ったってか」
「ご、が、つ、ば、え!」
頭に痛々しいこぶを背負っているザックスは、自分より前方を歩く頭一つ分低い背中を恨めしげに見ていた。
その背中の持ち主…ナマエは決して彼を振り向くことはなく、精神的HPゼロとでも言いたげであった。
「(沸点が低いんだよなー…まぁそれはそれで可愛いから良いんだけど)」
「なに」
「何も言ってないぞ」
「目が言ってる、目が!」
第六感が冴えたのか先程の勢いのままガーッと地団太をふむナマエ。
ザックスはその肩を引き寄せて、頭をくしゃくしゃに撫でてやる。
不服そうに眉根は寄せられたままだが、これをやると大抵ナマエは大人しくなる。
まるで喉を撫でられる猫のようだなとザックスは小さく笑うのだった。
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