彼の人のいつかの約束
彼の意志は、
まだ生きていた。
ーー彼の人のいつかの約束ーー
「あ、そう言えば」
「?」
「花売りワゴンを作る約束、してたんだった」
は、とナマエは食べていた朝のトーストをぽとりと落とす。
今日休みだし顔だすかーと目の前で牛乳を飲み干す男を唖然と眺めた。
「それいつの話?…すごく前にも聞いたことある気がするんだけど」
「あぁ、あれ以来ぜんっぜん機会がなくて」
「あれ以来って…」
確か、ザックスがモデオヘイムに向かった日の話だったはず。
だとするとこの約束、随分と放置されていたのではないか。
「無責任なやつ」
「誰かさんが一騒動起こしてくれたから更に延びたんだけど?」
「ちょ、なに」
取り落としたトーストをまた口に運ぼうとすれば、ザックスがこちらをニヤニヤしながら見ていることに気付く。そして、何か嫌な予感。
「つまり責任の一部はナマエにもあるわけだ」
「え」
「だから今日、俺と一緒に花売りワゴン作りに行くぞ」
「なん、ちょっと」
「ちなみに拒否権はなしだから」
朝飯終わったら出掛けるぞ、
ザックスは持ち前の笑顔を残して自分の家へ戻ってしまった。
「あーもー…私の休日がッ」
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