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世界に響く足音がやむ。静かに赤の瞳がこちらを向いた。それはやはりいつかと同じで、寂しそうな色をしている。
長いこと忘れていたのに、鮮明に思い出された。
「…君の想いが、私の恐怖だったんだ」
私に流れ込む“恐怖”は、
君の“寂しさ”だったんだ。
初めて出会った時から、君は変わっていないのか。寂しさから逃れられず、そう想い続けていたのか
それは、私のせいなのか
私の心を読んだのか、ピエロは曖昧に肩をすくめた。
赤の瞳は閉じられ、落ち着きを取り戻したような声音が響く。
『君が僕を忘れる度に、僕は独りになった』
『僕が独りになる度に、君に恐怖が降り積もった』
『恐怖が降り積もる度に、僕の声は君に届かなくなった』
ならば今、どうして君の声は私に届いている?
ピエロはまた笑う。
けれどそれは、誰かの微笑みに似ていた。
『降り積もった恐怖が、どこかへ行ってしまったからだよ』
あの人が、全部全部とっぱらってしまったんだもの。
「ザックス…」
脳裏に浮かぶ、姿。
私を私から助け出してくれた、彼は。
つう、と頬を流れた温かな雫。
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