ページ:3 ピタリ、ピエロはとぼけたように身体を揺らすのを止めた。 笑顔も嘘のように消え、世界が静まり返る。 『だって…僕が、居るのに』 ――――――…ミガ、イッショニ…イテクレル? ポツリ、ピエロは呟く。赤い瞳はひどく濁り、口元は下弦の月を思わせた。 カタカタと両手の指先を揺らし、小刻みにふるえ始めた。 『僕が君の傍にずっといるのに!』 『僕は君なのに!』 『君は僕なのに!』 悲しみ、憎しみ、憤り、全て入り混じり目の前で地団太を踏むピエロ。 あぁこれは誰だったか ピエロは嘆いているのだ。ピエロが誰だったかを忘れた私を。 『君の恐怖は僕なのに!』 忘れてはならなかったのだ。 私の恐怖の持ち主で、この私の半身を ――――――…コワイ、コワイ…タスケテ… …私の、恐怖? 私の恐怖の…在処? ――――――…ウ、ヒトリ…ャナイヨ 「…あ、」 知らない間にポッカリとできていた空白の記憶に、亀裂が走る。 少しだけ、隙間から見えた景色に、その姿を見つけた。 …あぁ、そうか、そうだったね。 思い出せたよ、だって君は 「独りぼっちが、嫌いなんだもんね」 [*前へ][次へ#] [戻る] |