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そんな彼が、ない力を振り絞って翼をはためかせ、手すりに降り立った時だ。
『お前なら、託せるか』
劣化してもなお、その実力に底は見えず。しかしとうとうその身体が悲鳴をあげ、ジェネシスは漆黒の片翼を無造作に広げ、魔洸炉の底へ落ちてしまった。
彼が最後に残した言葉、それは自分に向けられたものだったと気付けたのは
今になって、ようやくのことだ。
あの日のその後、アンジールを失ったショックが大きすぎたせいだと言えば言い訳だが。その悲しみに覆われて、ザックスは数多くのことを見失っていた。
託された夢、誇り、願い
そして…彼等の最愛の妹。
今になってようやく、全てが彼に回帰したのだった。
「ジェネシスはナマエを自分側に引き込もうって考えてるとは思えない…アイツは、それこそ最初から、ナマエを巻き込むことを避けてたんだから」
ジェネシスがナマエを危険に晒すはずはない。ザックスは確信していた。血は繋がっていなくとも、彼等は確かに兄妹なのだから。
そして同時に、ザックスは後悔していた。何故自分は、ジェネシスの言葉を忘れたまま、此処まで来てしまったのだろうと。
アイツからナマエを託されていたのに、俺は…
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