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鎮まりの水面に




彼から託されていた

でも、俺は応えてやれなかった


けれど、だからこそ言えることは


彼はいつだって、
アイツを大事に想っているってこと


そして、俺も





--鎮まりの水面に--





清潔感の溢れるこの室内に充満する独特な消毒液の匂いが鼻奥をくすぐる。
カーテン越しに柔らかな光を浴びて、ナマエは薄く瞼を開いた。
彼女は、その部屋の窓に沿わせるように置かれたベッドに横たわっていた。


「…。」


医者の見立てでは、しばらくは療養が必要だという。最近の不安定な精神状態や乱れた生活リズムは、身体にかなりの負担をかけていたようだ。

右手に厚く巻かれた包帯の下に、じりりとした痛みが残る。先日の暴走的な魔法による火傷跡である。
静まり返る室内。確かに聞こえるのは、左胸の穏やかな鼓動。


「…。」


医師による診察は済んでいるため、今日はもうひたすらに一人だ。
ここ数日、この施設の関係者以外がこの部屋を訪ねることはなかった。
それは医師の診断によって、精神不安定な状態のナマエを案じ、面会遮絶となっていたからだ。


けれど、不思議と何も感じなかった。
退屈も、不安も…そして、恐怖も

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