偽りの安穏に終止符を
「それにしても焼けたわね。もはや美黒じゃない?」
「結構たくさん皮が剥がれた。もう痛くないけどさ」
「良いじゃない、あそこの室内男子みたいにならなかったんだし」
「まぁね、あれ焼けてまっかっかだよ。頭も身体も」
「おーいお嬢サン方、丸聞こえだぞ、と」
「聞こえるように言ったのよ」
--偽りの安穏に終止符を--
バカンスが始まって、どれくらい経っただろうか。
周囲の観光客はもはや何回入れ替わり立ち替わっただろうか。
ナマエは朝から見慣れた海岸線を歩く。
もうそろそろ身体もなまってきたようなので、最近は早朝遠泳をしているのだ。
あまり海で泳いだことのなかったナマエも、今では地元の人と同じくらいにこの海を隅々まで泳ぎきってしまっていた。それは自己流で素潜りさえも習得してしまうほど。
そうして最近を過ごしている間に、ナマエはしっかり日焼けをしてしまったのだった。
「ふー…」
濡れた身体のまま、砂浜に寝転がれば真っ白な砂が背中に張り付く。しかしそれも馴れたもので、もはや気にすることもなくなった。
「…何やってんだろう、私」
まだ登りきらない朝日を眺めて、ナマエは目を閉じた。
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