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大きな音をひとつたてて、心臓は止まったかのように音をさせなくなった。
体中を駆け巡っていた血も、脳を焦がすような熱も、途端に全てがおさまった。
その変わりに、
ヒヤリとした嫌なものに心臓を鷲掴みにされたような
ヤケに冷たい衝撃が訪れた。
“私に彼が必要でも”
あの日の、兄達の殉職を知らされた日の記憶が蘇る。
あの時、悲しみを抱えた彼を支えたのは誰?
あの時、彼が涙を見せることを許したのは誰?
その誰かは私じゃない、その誰かはあの天使のような少女
“私に彼が必要でも”
“彼に私が必要とは限らないではないか”
気付いた時、ナマエの指はエレベーターのボタンに触れていた。
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