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あたたかい…
以前と変わらないザックスの手のひら。ナマエはやはり、そこに安らぎを感じた。
恐くなんかない、そのむしろ逆だ
私は、わたしは…
ナマエはうすく目を開き、ザックスを見上げる。
互いの視線が絡み、やはり心拍数は跳ね上がる。だけれど、もう目をそらすこてはない。
何にも侵されない沈黙が流れ
そして、次にザックスが言葉を紡ごうとした時だった。
ピルルルルルルルルッ
ピルルルルルルルルッ
「「ッ!!」」
けたたましい電子音が狭い空間に響き渡る。
思わずビクッと二人は肩を揺らして、弾かれたように互いから身体を離した。
どうやらザックスの携帯端末が着信を伝えているらしい。痛いくらいに心臓が跳ね、今日の間にどれくらい寿命が縮まっただろうかと頭の端で呑気な思考も働く始末。
罰が悪そうに互いに距離をとり、先程より更に気まずくなった空気。
暫く眉根を寄せるザックスに、ナマエは早く電話を取れと視線で促す。そうすれば、ザックスはポケットから携帯端末を取り出し、ディスプレイを開くのだった。
ピッ
「あ、あー……っと、もしもし?」
ザックスは携帯を耳にあてると、こちらに背を向けるように壁へ身体を向けた。
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