ページ:10
「お前、カウンセリングの素質あるんじゃねぇの」
「馬鹿野郎、俺は赤の他人にそこまで親切にはなれねぇよ」
「ちがいねぇ」
クス、どちらともなく笑みが零れる。
こみ上げてきた笑いはフロアに反響し、重く暗かった今までの全てを洗い流した。
久々に見たな、こいつの笑うとこ
カンセルは、額に手を当てて笑い続けるザックスを見て、安堵の息をもらす。
以前の彼が帰ってきた、あの無邪気で明るく真っ直ぐな友人が。
「ありがとな、カンセル」
「おうよ。御礼ついでにもう一発殴らせろ」
「いやいやそれ俺のセリフ」
ゴツン、互いの拳をぶつけてニヤリ。
あぁやはり自分達はこうでなくては面白くない。
「あと吉報、教えてやろうか」
「ん?」
「よくは知らないが、お前ナマエと何か後ろめたいことでもあったんだろ?」
「う!?」
図星、と言わんばかりにザックスは硬直する。
随分と前の出来事のはずなのに、鮮明に思い出されたあの日。後悔してもしきれない、あの日を最後にナマエと喋った記憶はない。やはり気まずいものがあったのだ。
素直すぎるそれに思わずカンセルが吹き出せば、居心地悪そうにザックスは顔をしかめた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!