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「忘れるわけ…ねぇだろ」
“悪かった。独りにして”
いつだったか、ナマエにそう謝ったことがあった。
そうすれば彼女は不機嫌そうに視線をそらし、しかし安堵したように肩を震わせたのを覚えている。
その姿を見て、ずっとこの少女の傍にいようと心に決めたのは、まぎれもない自分。
「傍にいてやらなきゃならなかったんだよ。無理矢理にでも、離れちゃならなかったんだよ」
カンセルは大きくかぶりを振り、ザックスの肩を握る。食い込む指に、ザックスは顔をしかめるが唇は引き結ばれたまま。
「アイツが“友達”を増やしだしたのは、寂しさを紛らすためだ」
そして、その全ての“友達”へ向けられるのは
はりついたような人の良い笑顔と、見繕われた棘のない言葉の羅列。
果たしてその“友達”と称される人間の中に、本当のナマエを知っているのはどれくらいだろう。かぞえるほどもいないのではなかろうか。
「どうしてこうなったか、分かるか?」
アイツが寂しがってる理由が、分かるか?
ズキン、心臓に痛みが走る。ザックスは眼を伏せ、奥歯を噛み締めた。
「俺が、アイツの大切な人達を…」
助けることが、出来なかったから
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