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ピタリと、ザックスは足を止める。
それは自分の部屋よりひとつ手前のドア。
その取っ手に手をかざす。だが、握れない。

許されるだろうか、俺は
こんなに弱すぎる俺は

しかし、その問答は最早必要ではなかったことを思い知らされることとなった。
ドアの向こうから妙な違和感が、襲う。

この部屋からは、人の気配
しかし、二つ

鼓動が早まる、それは徐々に焦燥感に繋がる。

誰だ、この部屋にいるもう一人は

辺りは静寂と化し、自分の息遣いのみが響く。世界から切り離されたような錯覚に、思わず足元からふらつきそうになる。
しかし、そこに微かな音が届いた。

「…なさ…ごめ、なさ…い…」

それは小さな嗚咽と、小さな声音。か細く震えるそれは、しかしはっきりとこの世界に響いた。

泣いているのか
この聞き慣れた声で喋るあの子は


「ごめ、んなさい…ッ」

ただただ赦しを請うそれに、
面と向かっているわけでもないのに、何故だか体が動かなくなる。


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