*
エレベーター特有の浮遊感に身を預けてみる。
しかし、特に何も思わない。
チン
軽い電子音と共に、浮遊感に別れをつげてドアが開く。
しかし、足は動かない。
エレベーターを降りれば
エレベーターを降りたら
エレベーターを降りてしまったら
ずくり
胸が痛む。
今の今まで現実逃避を繰り返していた思考回路は、今まさに急停止。考えないようにしていたのに、他の事で頭をいっぱいにしておけば大丈夫だと思ったのに。エレベーターのドアが開いた先の馴染みある景色を見た途端に、あぁやはりそれは崩れ去った。
ふと、今朝方の光景が目に浮かぶ。
布団の中に埋もれるようにして、規則正しい寝息をたてていたその無垢な寝顔が
気だるい眠りから覚めた自分にどれだけの罪悪感を感じさせたことか。
そんな自分が居たたまれなくて、急いで着替えて家から飛び出した。
朝目が覚めた時、あの子はどう思っただろう
俺の変貌ぶりに恐怖して、もう二度と目を合わせたくはなくなったか
それとも
この理不尽な仕打ちをした俺に恨みを向けるか
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