* 「ねぇザックス」 凛とした声。 それでいて柔らかく、優しい。 俺は少し離れた床で、彼女に背を向けるように腰をおろしていた。 「上の町に行ったら空、近いんだよね」 穴の開いた、教会の天井から降り注ぐ淡い光が彼女と花に降り注ぐ。 背を向けていても分かる、眩しい光景。 「怖いけど。お花達、喜ぶ…かな」 それにつられるように、教会の天井を見上げる。 あぁなんて、優しい光なんだろうか その光に誘われたように、頬を何かがつたう。 あぁ、アイツの前では泣かなかったくせに アイツに見られないならば…と、堪えていた何かが溢れ出した。 …アイツには、弱い自分を見せたくないんだ でもそれはたぶん言い訳。 恐いんだ…アイツまで、手放さなくてはいけなくなるような気がして ギュッ 背中から、優しいぬくもり。 心配してくれるのか、こんな俺を 君なら、俺を救ってくれるのか 優しい優しい天使さま 今だけでいいから、俺を許して 「うん…」 「ありがと…な」 何も言わずに頷く天使は、とても暖かかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |